今週の見方(5月12日)
決算を色々見ていると、今回ほど特徴がはっきりしているのも珍しく感じる。総体的に慎重な見方が多く、設備投資資金も多い。前期の大幅な収益アップは原材料が低迷しても販売価格を上げた事であり、それによって税金を払うとしても、介護などの給与に回すわけではなく、子育てと言ってもどうも効率が悪い資金の使い方である。挙げ句の果てに払った企業や高額納税者にはメリットは無く、一般に返金するという感じ。過去は未来産業に対して思い切った政府の援助などが行なわれていたし、今も一部には羽振り良く出す一方、病院経営や介護、保育所の人手不足なども解消されないから、企業は自らの物に使いたいのかと思う。
8日発表の7203トヨタ自動車の決算では、24/3期の営業利益は前年比+96.4%の5兆3,529億円で着地した。前期はハイブリッド車(HV)を中心とした販売台数の増加などから大幅増益となった一方、25/3期はモビリティカンパニーへの変革に向けた人的資本や成長領域への投資を織り込み、営業利益は前年比▲19.7%の4兆3,000億円と会社は計画していた。生産台数が横ばいであったことも同社の不調が想定されるとの見方であるが、研究費で1.7兆円使うなど、この収益はプラス面が多い。しかし、GSなどはレーティングを下げていた。同社の通期の想定為替レートを1ドル=145円と設定している部分やコストカットの進展など考えたら、もう少し評価があってもと考える。
半導体でも良い物と悪い物が露骨に変わり始めてきたし、少し勝ち組が慎重姿勢な見通しで、低迷企業はネガティブに出す傾向がある。不透明な景気の行方や国際緊張なども多く、今年はアメリカ大統領選もあるから、世の中がどう評価するか全く不明と考えて良いだろう。そうした不安を感じさせる企業数字であり、アルゴの売買は1000億円の利益であってもコンセンサスに5億足りない数字で大幅安を演じている。
もちろん後から反発はするのではあるが、時間が経つと再び売られたりする。ここ数日の引けに向っての大幅安というか、朝だけの大幅高というか、市場は非常に困惑している。米国の好調が反映しないにしても、5/8水曜日が高値から500円、5/9木曜日が高値から400円、5/10金曜日は高値から一時600円近く下がった。日銀の利上げ時期が早くなると言うが、相当織り込んできたとも言えるし、もう少し時間が有るからそうすぐに反応する状況でも無い。だから、誰かが大きな換金をしているという考え方になる。
タイミング的に難しいのは、NY株が大概ならば買いにくい位置になっており、ナーバスになる経済数字もここから出てくる。その良し悪しではなく、それを気にする時間に入るために位置が高いと調整があるという気がする。そのときに上がっていないからと反転してくれる市場ならば問題はないが、そこまで甘くないのではという気がする。ここまで平気で売れるのはヘッジファンドの中間決算なのか、来月に来る欧米年金の中間決算の売りか、GIPFや銀行などもここまで益出しを遅らせたのか、など思惑は膨らむというところ。実際、今期の数字が低いとなったら、発射台は低いが一回押さないとという気持ちが沸いてきてしまう。そういう市場で苦しいが、筆者はここは勝ち組企業も事実としてあるのだから、逆に人気化する傾向がある。こういう市場はグロース株からテンバガーが出てくるケースに似ている気がするので、ここは非常に面白い場面だと感じる。